商標に関するQ&A
Q1 商標出願に必要な商標の情報とはどのようなものですか。
Q2 商標出願に際して、その商標を現在使用している必要があるのでしょうか。
Q3 指定商品を決めようと思い、指定商品の表(省令別表)を見ましたが、上位概念や中位・下位概念が混在しており、どのレベルの概念を記載したらよいのかよくわかりません。
Q4 外国でも商標権を出願したいのですが、どのようなルートがありますか。
Q5 何年も使用し続けている商標がありますが、今から商標登録出願できますか。
Q6 いわゆる「ゆるキャラ」のようなキャラクターをマークとして使用していますが、将来的には、様々な別のポーズをとらせたキャラクターをシリーズとして使用したいと考えております。この場合、その別のポーズにも商標権の効力は及ぶのでしょうか。
Q7 いわゆる「ゆるキャラ」のようなキャラクターをマークとして使用していますが、将来的には、全く別の服を着せて、全く別のポーズをとらせたキャラクターをシリーズとして使用したいと考えております。この場合、その別のポーズ毎に商標登録が必要でしょうか。
Q8 指定商品を複数指定しようと思っておりますが、複数の区分(類)にまたがってしまいました。この場合、複数の出願が必要でしょうか。それとも1出願できますか。
Q9 立体商標を検討しておりますが、どのように立体を表現すればよいでしょうか。例えば、写真は使えますか。
Q10 商標権の効力は、類似する範囲まで及ぶと聞いたことがありますが、どのように「及ぶ」のか、具体的に教えてください。
Q11 私は、「音楽コンサート」を指定サービスとして、「パテントコンサート」の登録商標を取得しております。
Q12 自己の登録商標と類似する、他人の登録商標を発見した場合に執りうる措置について
Q1 商標出願に必要な商標の情報とはどのようなものですか
A1 商標出願には、出願人の氏名や住所等のいわゆる書誌的事項と、商標権の内容となる情報が含まれております。
このうち、商標権の内容となる部分は、以下の2種類の情報からなります。
(1)商標(マーク)
いわゆるマークであり、文字や図形、記号、立体的形状などの組み合わせからなります。
また、色彩も含まれます。
(2)指定商品又は役務
商品は、いわゆる形のある「商品・物品・製品」であり、取引対象となるものです。
役務はいわゆるサービスであって、「形のない」パーマのサービス、クリーニングサービス、
配達サービス、飲食物の提供サービス、等です。
これら、(1)マークと、(2)指定商品(役務) から、商標権の内容(権利範囲)が決定されます。
Q2 商標出願に際して、その商標を現在使用している必要があるのでしょうか
A2 いいえ。現在使用している必要はありません。ただし、将来的に使用していないと商標権が取り消される可能性もあります。
Q3 指定商品を決めようと思い、指定商品の表(省令別表)を見ましたが、上位概念や中位・下位概念が混在しており、どのレベルの概念を記載したらよいのかよくわかりません
A3 概念は、どのレベルでもかまいません。
上位概念の「燃料」でも良いし、
中位概念の「固体燃料」でもかまいません。また、
下位概念の「石炭」でもよいです。
これは出願人が自由に決めることができます。
Q4 外国でも商標権を出願したいのですが、どのようなルートがありますか
A4 種々のルートがありますが、日本人が利用できる主なルートは以下の通りです。
(1)直接外国に出願する。
直接外国に商標登録出願を行うルートです。国によって、様々なことが要求されますので、詳しくは、別途お問い合わせください。
例えば、その商標をその国で使用する予定が求められる場合もあります。
(2)マドリッドプロトコル出願(国際商標登録出願)を利用する。
商標権を得たい国(又は地域)を指定した国際出願です。但し、基礎となる日本出願又は日本登録が必要となります。
米国や中国等を指定することができ、また、下記の共同体商標を指定することもできます。一般に通称「マドプロ」と呼ばれます。
(3)共同体商標(欧州共同体商標)
欧州のEU27カ国で商標権を取得することができる広域商標制度も、日本人が利用することができます。
上記マドプロから指定することもできます。
Q5 何年も使用し続けている商標がありますが、今から商標登録出願できますか
A5 はい、できます。商標は、特許などと異なり、いわゆる「新規性」が要求されず、既に使用している商標でも出願が可能です。
むしろ、使用している方が周知性等を主張できることもあり、好適です。
Q6 いわゆる「ゆるキャラ」のようなキャラクターをマークとして使用していますが、将来的には、様々な別のポーズをとらせたキャラクターをシリーズとして使用したいと考えております。この場合、その別のポーズにも商標権の効力は及ぶのでしょうか。
A6 商標権の効力(禁止権)は、その商標と類似する範囲、指定商品等と類似する範囲に及びますので、その別のポーズが類似範囲であれば、
一般には商標権の効力(禁止権)に入ると言って良いかとは思います。
しかし、実際の判断は、個別具体的に行う必要があるので、別途お問い合わせください。
Q7 いわゆる「ゆるキャラ」のようなキャラクターをマークとして使用していますが、将来的には、全く別の服を着せて、全く別のポーズをとらせたキャラクターをシリーズとして使用したいと考えております。この場合、その別のポーズ毎に商標登録が必要でしょうか。
A7 商標権の効力(禁止権)は、Q6でも述べましたように類似範囲に及びます。
したがって、代表的なポーズについてのみ商標登録を受ければ、一般的には十分ではないかと思います。
しかし、実際の判断は、個別具体的に行う必要があるので、別途お問い合わせください。
Q8 指定商品を複数指定しようと思っておりますが、複数の区分(類)にまたがってしまいました。この場合、複数の出願が必要でしょうか。それとも1出願できますか。
A8 商標登録出願は、複数の区分(類)について1出願することができます。
ただし、区分の数に応じて、特許庁の料金、弊所の手数料がかかりますので、ご留意ください。
Q9 立体商標を検討しておりますが、どのように立体を表現すればよいでしょうか。例えば、写真は使えますか。
A9 立体商標は、その商標を複数の方向から表示した場合の図又は写真で表現することができます。
Q10 商標権の効力は、類似する範囲まで及ぶと聞いたことがありますが、どのように「及ぶ」のか具体的に教えてください。
商標権の効力は、専用権と、禁止権と、の2種類に分けられます。
専用権・・・自分が積極的に登録商標を使用することが出来る効力を言います。
この専用権の範囲は、登録商標と同一の範囲になります。
禁止権・・・他人の使用や、商標登録を排除することができる効力を言います。
この禁止権の範囲は、登録商標と同一又は類似の範囲になります。
つまり、権利者は登録商標の類似範囲まで、他人の使用を禁止することができます。
しかし、類似範囲では自分が積極的に使用することが保証されているわけではありません。
例えば、登録商標の類似範囲内では、他人の登録商標と類似している場合も考えられます(下図赤色部参照)。
この場合、自己の登録商標の類似範囲であっても使用することはできないことになります。
図で表すと以下のようになります。
オレンジ:A氏の登録商標。A氏は常に使用でき、かつ他人の使用を禁止できます。
黄 :A氏の類似範囲。他人の使用を禁止することができます。
緑 :B氏の登録商標。B氏は常に使用でき、かつ他人の使用を禁止できます。
黄緑 :B氏の類似範囲。他人の使用を禁止することができます。
赤 :A氏及びB氏の類似範囲。A氏もB氏も他人の使用を禁止できますが、自分も使用できません。
Q11 私は、「音楽コンサート」を指定サービスとして、「パテントコンサート」の登録商標を取得しております。そして、今年この「パテントコンサート」を開催致しました。
Q11(1)
ここで、来年もパテントコンサートを開催するので、「第2回パテントコンサート」と記載したいのですが、このような「第2回」を付した記載は、可能でしょうか。
Q11(2)
来年は、ワイナリーとタイアップしたコンサートも行う予定です。そこで、別途「パテントコンサート-ワインの夕べ」なる記載をしたいのですが、可能でしょうか。
A11(1)
一般に、付記的な部分程度を付加して使用することは、登録商標の使用と認められる場合が多いと考えられます。そのため、「第2回パテントコンサート」も、「第3回パテントコンサート」も一般的には問題なく使用できると考えられます。
また、「2020年パテントコンサート」等も同様に、一般的には問題なく使用できると考えられます。
A11(2)
他に、「ワインの夕べ」なる登録商標や、「パテントコンサート-ワインの夕べ」という登録商標が存在すれば、その登録商標の同一、類似範囲となる可能性があり、使用できない場合も可能性としてはあります。
もちろん、使用する商品やサービスも十分に考慮して判断する必要があります。
また、付加する「ワインの夕べ」が周知・著名商標であれば、不正競争の可能性もあるかもしれません。
このように、単なる付記的な部分にとどまらず、実際に識別力を発揮しそうな部分の追加であれば、使用が出来ない場合もあります。
そのため、念のため、「パテントコンサート-ワインの夕べ」なる商標出願を行っておくことをお勧めします。
Q12
自己の登録商標と類似する、他人の登録商標を発見した場合に執りうる措置について
私A社は、商標登録「スーパーエックス」を保有しており、第9類、「携帯電話」に使用しております。使用はもう3年以上になります。
最近、他者であるB社が、商標登録「スーパーX」を、第9類「携帯電話」第41類「携帯電話を用いたネットゲームの提供」で商標登録を受けて、使用していることをインターネット上で発見しました。
しかし、B社の「スーパーX」は、私A社の「スーパーエックス」と類似していると思います。私A社は、B社の商標登録「スーパーX」に対して、どのように対応したら良いでしょうか。
A12 確かに、B社の「スーパーX」は、A社の「スーパーエックス」と類似している可能性が高いと思われます。
(対応策1)そこで、第1に、無効審判(商標法46条)によって、B社の商標登録「スーパーX」を消滅させることが考えられます。なお、無効審判の請求は、利害関係人がすることができますが、A社は、競合する「携帯電話」に「スーパーエックス」を使用しているので、利害関係人であると思われます。無効審判で、商標登録を無効にすれば、B社の商標登録「スーパーX」は、登録時にさかのぼって消滅します。
(対応策2)第2に、異議申し立て(商標法43条の2)によって、B社の商標登録「スーパーX」を消滅させることが考えられます。なお、異議申し立ては、利害関係は不要で誰でもすることができます。ただし、無効審判と異なり、異議申し立てはB社の登録商標「スーパーX」の商標登録公報の発行から2ヶ月以内にのみすることができます。異議申し立てで、商標登録を取り消せば、B社の商標登録「スーパーX」は、登録時にさかのぼって消滅します。
(対応策3)B社の「スーパーX」が商標登録されていても、A社の「スーパーエックス」の使用が制限されるわけではありません。自分の商標登録は、常に使用することが可能です。
そこで、自分の登録商標「スーパーエックス」が使用できるので、B社の「スーパーX」については、目をつぶるのも一つの方策かもしれません。「何もしない」というのも一つの対応かもしれません。
(対応策4)B社の「スーパーX」が商標登録されたということは、A社の「スーパーエックス」と、B社の「スーパーX」が非類似(似ていない)と特許庁に判断されたことになります。
そこで、A社としては、A社の「スーパーエックス」を、B社の第41類「携帯電話にを用いたネットゲームの提供」にも、商標登録することも考えられます。無理に特許庁の判断に逆らわずに、その判断に従った手続きを行うことも妥当な対応策かもしれません。
なお、まず(対応策1)を採用して、それが認められなかったときに、この(対応策4)を採用することも現実的には好ましいかと存じます。