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外国情報
PCT国際出願のご利用方法
1. はじめに
PCTは、外国で特許等を取得する手続として広く利用されています。
このPCT出願は1出願で140ヵ国以上に出願したと同等の効果が得られるので、
複数の外国で権利を取得しようとする場合は、有効なルートの一つです。
近年ではこのPCT出願について、以下のような利用形態が広く利用されています。
2.ダイレクトPCT出願
一般には、
日本出願 → 1年以内 → PCT出願(日本指定なし) → 30ヶ月 → 外国へ移行
という流れが一般的ですが、
ダイレクト形式
PCT出願 → 30ヶ月以内 → 日本国 及び 外国に移行
という形式で行う場合が増えてきています。
このダイレクトPCT出願は、
日本出願とPCT出願の2出願をする場合に比べて1出願で済ませるため、その分、コストを低減することができる。
日本も含めてPCTルートで管理できるので、管理がわかりやすい。
国際調査報告が早く得られるので、権利化の可能性を早く知ることができ、対応を迅速にすることができる。
国際調査報告が早期に得られるので、日本国における審査請求費用(特許庁費用)が大幅に安くなる。(a)と併せてコスト削減効果が大。
PCT-PPH等の制度によって、権利化を加速することができ、早く権利を取得できる可能性が高くなる。
国際調査報告が得られるので、必要であれば、さらに優先権主張してよりブラッシュアップ(内容をより洗練)したPCT出願を行うことが可能である。
※日本出願を基礎として1年以内にPCT出願をした場合は、新しく優先権主張したブラッシュアップしたPCT出願をすることは期間的に難しい場合が多いです
等のメリットがあるため、最初から日本+外国で特許を取得することが明らかな場合は、コスト的にもスピード的にもメリットが大です。
3.国毎に移行タイミングをずらすことができる
一般には、優先日から30ヶ月期限までに各国に移行します。しかし、必ずしも30ヶ月に各国に「同時に」移行する必要はありません。
例えば、重要な米国に先に移行し、その結果を踏まえて他の外国に移行すれば、より効率的に処理を進められる可能性があります。
また、移行費用を分散化することができるので、コスト負担の分散化をはかることができます。
さらに、先に登録した権利に基づき、PPH制度を利用することによって、後に移行した国におけるる権利化を加速することができる可能性があります。
したがって、まず重要な国から移行処理を行っていくことは種々のメリットがあり、検討する価値があるかと思います。
特に、米国を含む複数国で同時に審査が進行する場合、米国以外の国で見いだされた文献は、米国にIDSする必要性があるので、そのIDSの処理の手間や、IDSのためにRCE等する必要が生じるなど、煩雑な処理が必要となる場合があります。
これに対して、国毎に移行すれば、審査が同時進行する可能性が低くなるため、IDS等の処理作業等を軽減することができ、
管理上有用な場合が多いと考えられます。
※なお、30ヶ月以前に早期に各国に移行する際は、条約23条(2)の規定に基づく審査の開始を明示的に指定官庁に対して示すと共に、以下の手続を行います。
・国際出願書類の指定官庁への送達を国際事務局に請求します(R47.4)
・国際調査機関の見解の指定官庁への送達を国際事務局に請求します(R44の2.2)
これらの手続によって、各国が審査を円滑に開始できます。
4.他人にライセンスする予定がある場合、その旨を明示することができ、新たなライセンスビジネスチャンスの種とすることが可能です
5.第3者による情報提供制度が2012年7月から開始される予定です